毎回丁寧に「引き寄せの法則」に始まる宇宙の法則を復習してくれるエイブラハムですが、今回は心なし大づかみと言うか雑ぱくな感じであります。
既刊で語られてきたオリジナル用語が、さして秩序だった説明もなく次から次へと出てくるので、彼らの世界観がよく整理できていない読者さんには、やや分かりづらい内容かと思われます。
さて、タイトルは『理想のパートナーと…』となっておりますが、本書は友人から家族からソウルメイト、ビジネスパートナー、結婚やセックス、家事、子育てに至るまで、かなり広範な人間関係の話題を扱っています。
とはいえ本書の"力点"は、幅広いケーススタディを通覧して「法則」の具体的な実用例をあげつらっていく、といった方向性にはありません。むしろ厳選されたトピックを丹念に吟味することによって、「法則」の“根幹的な理解”を深めていこうといった眼目でしょう。その際、人間関係にまつわる様々な嘘がひとつまたひとつと暴かれていく、というなかなかスリリングな構成になっています。
全般的にとりわけ強調されるのが、「源(ソース)との調和」、という概念です。
どんな人間関係の局面に際しても、エイブラハムが説く対処法はただ一つ。・・・「源」を思い出しなさい・・・「源」に追いつきなさい・・・「源」と結びつきなさい。
この「源との調和」の一元論とでもいうべきメッセージが力強く復唱されるものですから、「私がいま嫌な気分なのは目の前の相手が原因だ」という、我々の脳裏にこびりついた社会の嘘は、いやが上にも洗い流されていきます。まさに「脱・洗脳」。
他人をコントロールしようと思ってはいけない、ただ「源」だけを求めればいいんだ。「源」と仲良くなれば万物と仲良くなれるんだ、ということがだんだんと腹で理解できてくるようになるのです。
また物質世界の「コントラスト(多様性)の意義」といったものが、既刊のどの作品よりも明快に詳説されている点も見逃せません。それもその筈、「人間関係」とはそのものずばり「コントラストの体験」なのですから。
本書でエイブラハムが明示する目標は遠大であり、それは「ネガティブ体験というコントラスト」すら歓迎できるほどの広い視野の確立です。
いつも彼らは、この「明暗著しい物質世界」を食材のたっぷりつまったキッチンやビュッフェに喩えますが、その辺りの喩えの意義がいまひとつピンときていないという方には、とても学びの多い本になる筈です。
言えば、「コントラストの称揚」と「源との調和」。・・・この両輪こそが人間関係のマスターキーでしょう。両概念をもってすれば、ややこしく入り組んだ人間関係の見通しがすっきり明るくなること請け合いです。そしてその見通しの先には、確かな自己信頼に基づく楽しい共同創造の道が拓けていくことでしょう。
ただ少し難を言えば、人間関係の対処法という点では『
実践 引き寄せの法則』に充分に充実したケーススタディが収録されていますし、学びの方向性で言えば『
引き寄せの法則の本質』と似ている点も多く、その意味ではこの本、シリーズの中での個性がいま一歩はっきりしないきらいがありますね。
また文章に関して、若干、いつもと比べて表現が込み入って煩雑なのも引っかかりました。
とはいえそこはさすがのエイブラハムです。金言・名言がずらりなのは相変わらず。学びの内容も深いですし、上述の問題を差し引いても、精読する価値のある一品かと思われます。
ちなみに今回初めて登場する「ヴォルテックス(渦巻きの意)」という概念ですが、これは既刊で「波動の預託口座」と表現されていたものとほぼ同じ意味です。より動的でパワフルな喩えではありますが、決して目新しいことを述べているわけではありませんので、ご注意を。