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理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
 
 

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書) (新書)

高橋 昌一郎 (著)
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内容紹介

アロウ、ハイゼンベルク、ゲーデルらの思索を平易に解説しつつ、人類が到達した「選択」「科学」「知識」の限界論の核心へ。 知的刺激にみちた、「理性の限界」をめぐる論理学ディベート。


内容(「BOOK」データベースより)

私たち人間は、何を、どこまで、どのようにして知ることができるのか?いつか将来、あらゆる問題を理性的に解決できる日が来るのか?あるいは、人間の理性には、永遠に超えられない限界があるのか?従来、哲学で扱われてきたこれらの難問に、多様な視点から切り込んだ議論(ディベート)は、アロウの不可能性定理からハイゼンベルクの不確定性原理、さらにゲーデルの不完全性定理へと展開し、人類の到達した「選択」「科学」「知識」の限界論の核心を明らかにする。そして、覗きこんだ自然界の中心に見えてきたのは、確固たる実在や確実性ではなく…。

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5つ星のうち 5.0 幅広い対象分野と対話形式の平易な説明が秀逸な名著, 2009/9/8
久しぶりに「面白すぎる本に出会った」という感想を持たせてくれる本に出会った、というのが読後の正直な感想です。

私は哲学や論理学については素人ですが、この本はそのような素人であっても、グイグイと引き込まれていく、非常な読みやすさを持っています。なぜそうなのか考えてみると、以下のような特徴があると思いました。

1) 分からない人の存在を前提に書いている
 とかく専門書に頻出しがちな横文字や専門用語の説明無しの使用は、この本では皆無と言えます。なぜなら、架空のシンポジウムを文字おこしした本として書かれており、素人の会社員や運動選手などといった、普通の人が「分かりません!」とすぐに突っ込みを入れ、「では分かりやすくご説明しましょう」と、すぐに説明が続くからです。それでも、「分かりやすくと言いつつ、実際には分からない」ということが他の本では多いのですが、この本に限ってはそのような心配は無用です。

2) 問題の提示の仕方が生活に密着した題材として出されるため常に現実感がある
 とかく哲学というものは、素人から見ると、およそ生活とはかけ離れた絵空事、という風に感じがちです。それは、問題設定が自分の生活の領域とかけ離れているからだと思います。この本はそうではなく、常に「私たち一般人の現実」を議論の出発点にしています。そのため、哲学や論理学とは、実は自分の生活に非常に大きな位置を占めているのだ、ということが良く分かるようになっています。生活に役立つ本、人生を豊かにさせてくれる本。著者はおそらくそう言うことを目指して書いたのではないかということが、読んでいて良く伝わってくるのです。

他にも色々、良い所はあるのですが、私にとってはこの二点だけでも、読むに値すると思います。ぜひお読み下さい。おすすめします!
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33 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 深い内容と読みやすさの融合した傑作, 2008/9/26
最初に、この本は日本人が書くものとしては、
異例に多くの哲学的、科学的な分野に関連しており、
かつ私がこれまでに読んだ本の中で
最も素晴らしく平易でわかりやすいプレゼンテーションをしている点で最高である。

著者は1、論理的なゲーデルの不完全性について造詣が深く、
著名な論理学者であるスマリヤンの翻訳も手がけている。
しかし、2、本書では社会科学的な民主主義の決定不可能性、
さらに3、量子力学的な不確定性、ならびに科学理論の相対主義、
などについても筆をすすめ、3部が一体となって素晴らしい入門書となっているのだ。


社会科学では、アローによる不可能性定理が有名だが、
これは一言でいえば、
「民主主義における決定方法では、推移律その他の
常識的に望ましいと思われる性質のすべてを満たせない」ほどのものだ。
これは「決め方の原理」などの有名な本も参照にすればわかりやすいかもしれない。
ついで、現代社会科学の基礎である、ゲーム理論とナッシュ均衡が説明される。

量子力学では、物体の位置と運動量を完全に知ることはできないという
ハイゼンベルクの不確定性が有名だが、そういった古典解釈を超えて、
量子力学の意味する相補性から生じる情報伝達のEPR矛盾、
さらには多世界解釈が説明される。
同時に科学という試みのもつ客観性についても、ポパーからクーン、
ファイヤーアーベントへと続く論争が解説される。

ゲーデルの不完全性定理については、よく知られた形では、
「この文章は間違っている」というような自己言及を許すような形式システム、
(これは数学体系を含めて、実質的にほとんどすべての論理体系のこと)では、
決定不能な命題が存在することを意味している。
これももっと詳しくは類書を読めばいいのだろうが、それをチャイティンの定理など
もっと新しい発見とともに論理学の限界として提示している点が新しい。

しかし、この本の素晴らしさは、これらの人間理性の限界がそれぞれ独立しているのではなく、
まさに量子的な「絡み合った状態」にあることを、興味深く示唆している点だろう。

特に、ナッシュ均衡の持つ合理性、つまり、相手の行動の予見を無限に繰り返すという
人間の信念の体系における無矛盾性と
タルスキー、スマリヤン的な、論理体系の持つ不可避的な矛盾性などとの関係を
論じている点は素晴らしい。
これはもう、単なる啓もう書ではなく、学問書に昇華し得る指摘であると思う。

私は科学的な知識というのは、今後も無限に進歩し続けると信じる素朴科学主義者だが、
理性的な企ての持つ根本的な矛盾を考えさせられる点で、
また、できれば私自身がいつか書いてみたいと思っていたという意味で、
すべての人にお勧めできる出色の書籍だ。
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21 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 衝撃の感想!, 2008/7/4
完全な民主主義が無いことは知っていたけれど、その証明については初めて読んだ。チキンレースの論展開は痛快だった。バカな方が勝ち、というのは、若者の複雑な精神を反映していて面白い。神の不完全性を説く場面を読んだ時は、わくわくして、もっと早く読めないか、と焦れったくなった。とりわけ衝撃を受けたのは第2章だった。「科学は一種の物語である」という言葉に鳥肌が立った。首筋から背中にかけて、もう一つ目が開いたような感覚だった。

この本は、架空のシンポジウムを舞台にしているのだから、「小説」と受け取ってもいいと思う。論文でも参考書でもない、会話だけで物語が展開していく、喩えるなら赤川次郎を彷彿とさせるような小説だ。そうだとすると、信じるも信じないも、どの程度信じるのかも読み手の自由だ、という方法論的虚無主義者の発言を読み流させずにふと考え込ませる為の、大掛かりな仕掛けが施されているのではないか。しっかり引っ掛かっちゃったぞ。

此処まで考えて、これも結局自分という小さな宗教に捕われているに過ぎないことに思い当たった。自己完結しがちな私でも、カント主義者の発言を読んでいると、カントを語りたいだけなのではないか、と感じることが多かった。それは、一つの見解に凝り固まってはいけないことの好例だと思う。自分を客観視する視点が、少し定まった気がする。司会者にまで軽く流され続けたカント主義者に感謝だ。

私はまだ、自分の理性の限界には辿り着けていない。何せ、この本を完全には理解できていないことが解っているのだから。それにしても、読んだからと言って、鼻高々になれない本だ。上へ上へと下降していく奇妙な錯覚に陥る。極めた気になれないのだ。もっと突き詰めて考えてみたくなる。自分対自分の知恵比べをしてみたくなる。その内、今までの限界を超えることができるかもしれない。すると、また次々と限界の薄皮一枚先が現れていく・・・。
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