カープの応援はマツダスタジアムだけではないのだという、
至極当たり前のことが、時に半分のカープファンには見過ごされる。
実際に、カープの本拠地は実は横浜か神宮かと言われることさえある、ビジターの盛り上がり。
広島のファンが球場に通うのは、溶け込んだ文化のようなものだ。
だが、ビジターに集うカープファンは、ごく普通にその土地の文化になじんでしまえば、
きっとビジター席という場には来なかっただろう。基町さんの感覚は、実にリアルだ。
そして、球場では、試合に夢中になっているようでいて、
実際そこまで野球のことばかり考えているわけでもないのだ。そこはサッカー等とは違う。
目の前の試合が、野球が、選手のプレーが、自分の人生の何かと共鳴する。
今巻は、いろいろな球場に訪ねるということで、いろいろな文化を味わえるという、
どちらかといえば在京のファンならではの楽しみ方がより鮮明になっている。
そして実央が、いろんなファンや、ホーム席、ビジター席、遠くに見やる貴賓席という
いろいろな視点に気付き、成長するという、この作品の背骨に直結する、いいシチュエーションだと思う。
ただ、周囲がその成長を受け入れるほど容易に変化するわけではない。
あきらめない、という言葉をカープという球団に捧げるのは、いささかリアルに疑念も残るが、
ここではそれは「カープファン」という、
量的には悲しい思いがずっと多いはずなのに、なぜかきらめいた思い出ばかりな、
愛すべき懲りない連中に向けられている。
何度くじけそうになっても、春が来れば新たなシーズンが始まるのだ。