前巻で、12球団ネタへと裾野を拡大していく伏線もあったので、
すっかりそんなふうになってしまうことを懸念していたのだが、
それは払拭された。非常に正しい、そして味わい深さを増した作品へと軌道は乗ったと思う。
プロ野球を応援する人は、その日その日の勝ち負けを刹那的に応援しているようでいて、
実は生活の中にプロ野球が溶け込んでいった後には、野球そのもの以上に、
野球を巡るままならない現実と厳しさ、そしてそれに立ち向かおうとする者に目を向けざるをえない。
もう長年ペナントレースという華やかな舞台から遠ざかり、
しかしなおかつこれだけのファンをとりこにしてきた広島東洋カープには、
(悲しむべきことかもしれないが)優勝というゴールを持たないドラマが詰まっている。
だから、この作品の軸たりうるのだ。
一喜一憂するファンである登場人物たちは、
ついに時間までも私たちと共有した。
震災と、そしてその時のプロ野球界という現実を「今」背負ったこの作品は、
はっきりと新たなステージに立った。
彼女たちの明日は、私たちの明日と同じ時間。
頑張ろう、そう、それはいつかは、ではなく、今こそ。