私はこの書でサピア、イェルムスレウ、ウォーフやブルームフィールドといった言語学者の説を簡単に見てみることができました。しかし、この書はあくまでも、私たちに外観を提示するためのもので、出版社もそれを意図したシリーズです。この本で特に私の注意を惹いたのは「前意識が事物表象と語表象の両方を持つのに対して、無意識には事物表象しかない。言い換えれば、語表象とは、言語化と意識化を結合する概念である。無意識内容が前意識に上がってくるためには、語表象と結びつき、言語化され意識化される必要がある」という部分です。ジャック・ラカンがヤーコブソンに影響されて、フロイトの置換を換喩と、圧縮を隠喩と同一視して「無意識はひとつの言語として構造化されている」と言っているのに対し、「無意識は事物表象しかない」というのは真っ向から対立する説ではないでしょうか。しかし、様々な精神分析学では、無意識には自と他の区別すらないという意見が大方で、立川氏や山田氏の説が有力であることを示しています。この書は非常に高度な理論やわかりにくい説明が多いのですが、現代言語学の輪郭を一夜にして手中に収めたいと思っている人にはお勧めです。