全21話構成の初めから三分の一は、著者にしては珍しく、比較的直線的に議論が進む。古来より教育学は政治学の一部であったことの確認を皮切りとして、教育の目的は先天的な要因を発現させることか、それとも自然的な素質にない社会的規律を習慣づけることか、教育が必要であるのは人間が他の動物よりも弱いからか、それとも人間の獣性を抑制するためか...といった論点を軸に話が進む。それ以降の話は、著者がこれまで書いてきたエッセーの寄せ集めで、いつもどおりさほど脈略は感じられない。だが、放任主義教育批判や林竹二批判など、教育の強制的側面に多少力点が置かれているようにも感じられる。
全体としては、系統立った教科書というよりも、少しお堅いエッセー集といった印象。よって、教育の倫理学を体系的に学びたい人には不向き。だが、古今東西の英知を随所に織り込みつつ展開されるその議論を、著者独特の文体と明快な論旨に乗せて読み進めていけば、様々なインスピレーションが得られるだろう。著者の『子育ての倫理学』(丸善ライブラリー)を読んで著者の教育論に興味を持った人には、きっと有益。