「現代日本語文法」シリーズの第2回配本の第3巻で、アスペクト、テンス、肯定と否定についてそれぞれ約100ページほどを費やして解説されている。執筆担当は安達太郎氏・岩崎卓氏・野田春美氏・日高水穂氏・森山卓郎氏で、補筆とリライト担当が高梨信乃氏・宮崎和人氏・八亀裕美となっている(p.321より)。執筆陣の多くが寺村秀夫=仁田義雄系列の研究者なので(巻頭の「参照文法紹介」より)、そのおかげもあって一貫性のある構成に仕上がっている。執筆陣を見ても信頼に足る本であることはわかる。
本書はおもに日本語教師やこれからアカデミックな研究を始める研究者を読者対象としているようで、それぞれの分野について文法現象が網羅的に、また順序よく解説される。ただし、なぜそうなるかについてはいっさい考察されておらず、読み手は必要な情報を自分で整理するか、自分なり理由づけしながら読み進まなければならない。反対に、暗記しながら淡々と読むには情報量が多く、そういった読み方はよほどの忍耐力がないときついのではないだろうか。ピンポイントで概観する良いが、全部を通して読むのなら、飽きるのを我慢しながら読む「能力」も必要である。
研究者の卵であれ日本語教師志望者であれ、こういった本の価値は土台作りにある。読んで面白いなどという本ではないが、基礎力をつけるには良い本である。また、日本語教師については、学習者がひっかかりそうな情報を先回りして与える必要があり、授業前にそういった情報をフォローするのに向いている。また研究者は、自分が専門とする分野で、考察の際にプラスとなる文法現象を探すのにも使えるだろう。
逆に言うと、基本的な力がすでにある人は読んでおく必要はなく、本格的な専門研究に入る前に土台をきちん作っておきたいという向きに最もおすすめである。また、先ほども書いたように、本書を見る限り記述のむらがなく、安定しているので、調べるために持っておくのもよいだろう。ただ、2008年5月段階でまだ2巻しか出ていないのがすこし残念なところ(もう1冊は第4巻、モダリティについて)。