「小泉改革」の熱狂から数年、改革の行く末に不安を抑えきれなくなった国民は、その内実がよくわからないままに「政権交代」を選択した。
いま憧憬の的となっているのは、誰しもが今と同じか、願わくば今より少しマシな生活水準を堅持できる「安定」社会なのかも知れない。
しかし「安定」した生活とは具体的に何で、どのようにしたら手に入れられるのか。誰が「安定」した生活を邪魔していて、誰がその被害を受けているのか。一部の人だけが恩恵を受け、多くの人々が明日の不安におびえるような社会は、どのように変えていったらよいのか。こうした問題を大局的な見地から考えるための材料は、思った以上に手に入りにくい。人々はただ目の前の不満感だけを募らせ、冷静に思考する習慣を失っているようにも見える。
こうした不安に満ちた今日の社会状況を見据えたとき、20世紀後半のこの国が辿ってきた政治経済的変動を分かりやすく総括した本著は、来るべき社会の在り方を構想するためのヒントを提供してくれる。
もう、昭和のホームドラマに見られるような安定した家族や会社生活は手に入らない。その現実を見据えた上で、国民全員が責任をもってこの国の将来を選択していくしかない、そんなメッセージが本書の随所から聞こえてくる。
これからの日本と、それとは切り離すことができない自分の将来を考えたい人にとっての好著である。