本書の特徴は第1に,これまでほとんど実務的レベルでしか書かれることのなかった損害保険産業について,経済学の理論・分析手法を用いてその本格的な分析に取り組んだ点にある。特に,ミクロ経済学の手法を用いた損保市場の均衡分析と保険料率の分析は興味深いものがある。
第2に,損保業界と近年内外の耳目を集めているいわゆる「金融ビッグバン」との関係を取り上げている。そのうちでは特に欧米における損保市場での新しい展開(カタストロフィ保険,ファイナイト・リスク再保険等)について多くの紙面を割いていることは,業界の実務家にとってのみでなく金融理論の専門家,また最近ブーム的様相を帯びつつある「金融工学」に関心のある人々にとってもきわめて刺激的な部分であろう。また第3のポイントとして,従来典型的規制産業とされて来た損保業界を規制緩和論との関連から取り上げて論じている点は今日混迷気味のわが国の規制緩和論争に対する1つの問題提起となり得る。
本書は,わが国における損保産業の本格的な経済分析として他に類を見ないユニークな業績として高く評価できる。 (住友生命総合研究所 取締役主席研究員 兼 國學院大学経済学部兼任講師 市来 治海×もう頼まない)
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