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現代日本の思想―その五つの渦 (岩波新書 青版 257)
 
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現代日本の思想―その五つの渦 (岩波新書 青版 257) [新書]

久野 収 , 鶴見 俊輔
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)

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登録情報

  • 新書: 233ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1956/11/17)
  • ISBN-10: 4004120411
  • ISBN-13: 978-4004120414
  • 発売日: 1956/11/17
  • 商品の寸法: 16.8 x 10.6 x 0.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 28,413位 (本のベストセラーを見る)
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思想とは思想家の頭のなかにある。なにせ「思想家」なのだから。−−こう考える人は、本書の冒頭からして目眩を覚える。最初に論じられるのは、白樺派である。それはまずもって、日本の芸術運動として知られる。著者は彼らの芸術、また「新しき村」という社会運動のなかに思想を見ていく。著者にとって、思想とはこのように現実を動かすものである。思想とは、すでに起こっている現実を抽象して考えられるものではないのだ。

本書を貫くのはこの視点である。この視点によって論じられる「思想」は次の通り。日本共産党の結党以来の運動。地方を中心として教師の間に起こった、生活綴り方運動。伊藤博文の作った明治期の国家システムが崩壊していく先を見据えた、吉野作造と北一輝の思想。そして戦後直後の実存主義である。

本書は久野収と鶴見俊輔の共著だ。特に鶴見俊輔は第4章を除く、4つの章を執筆している。その論理的で極めて明晰な文章に驚かされる。そしてまた、冷静な批判と客観的な視点に。例えば日本共産党に関して鶴見は、一貫して批判する。しかしながら、政府・軍部の徹底的な弾圧、社会からの無理解にもかかわらず、結党以来一貫して天皇制反対を守り続けたことを大きく評価する。これは久野には無い態度である。冷静・客観的でありながら、熱のこもった鶴見の筆致。それは生活綴り方運動の記述の仕方に特に見られる。徐々にマルクス主義に傾斜していくその過程を、当時の子供の文章を引用しながら明らかにする。極めて効果的な論じ方だ。

とはいえ、二つの疑問が残った。一つは、綴り方運動の位置づけについて。鶴見によれば、生活綴り方運動はプラグマティズムである。しかしそれは、本家アメリカのプラグマティズムと極めて僅かなつながりしかない。生活綴り方運動をプラグマティズムと称することは、私には違和感があった。むしろそれが「主義」としては不定だったからこそ、マルクス主義に傾斜していったのだろう。もう一つは、実存主義について。鶴見によれば、彼が呼ぶ実存主義は戦後すぐの時代にしかない。鶴見が論じた時期(1956年)でさえ、「それを生み出した戦後的社会条件が既に終わった」(p.207)。だが、いわゆる実存主義思想の隆盛はもう少し後の時代である。日本での実存主義は、戦後日本が徐々に立ち直ってきた時代から、「68年」まで続くのではないか。

本書は原著1956年であるから、だいぶ古い本だ。だが、その視点はまったく色褪せていない。そして論じられた思想も、現在でも日本社会を規定し、影を残している。この本の続編となるような本が、今こそ必要なのではないか。ミネルヴァの梟は夕方に飛び立つのではない。朝に飛び立ち、人々を導いていくのだ。
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「現代日本の思想」という題名だが、初版は1956年である。

では、書の中身はやはり色褪せてしまっているのかといえば、そのような事は感じられない。明治時代から戦後までの思想を国家的政治レベルから大衆的レベルまで、幅広く縦横に五つの枠で捉えているからだ。旧いどころか逆に独自な着眼による興味深い発見が詰まっている。

また、日本の思想は、海外から輸入されたものが多く、それが当時の社会背景をもとにどう結びついて変容したのかがどうしても注目されてしまうが、それらに拠らずとも、視点の角度を変えると、独自に日本で生み出された思想のかたちや人々の活動が見えてくることを教えてくれる。

著者は、まえがきとあとがきで「思想」について自問自答を繰り返している。

「私たちは、ひとつの思想流派をえらんだからといって、まなびうる遺産がその思想流派の過去と現在だけにしかないとは考えない。思想は、そんなきゅうくつなものではない。」

「自分が自分であることを立証しなければならない…自分をうしなう思想は…生命のなくなった死物である。」

果てしない終わりのない変化を続ける「思想」。それに向き合うために必要な強い覚悟と意思を、本書は読者に問い続ける。
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歴史的書物 2005/11/3
By daepodong VINE™ メンバー
 著者らが選定した「五つの思想」は、もはや現代日本において訴求力を失ってしまっていることはいうまでもないだろう。さらに、本書は当時における第一級の知識人とみなされていたふたりの著者における社会認識を知る意味では意味があるが、表題の意味においてはもはや死んだ書物になってしまっていると言ってしまってもいいだろう。評者としては、分担執筆において、久野氏よりも鶴見氏のほうに、よりマルクス主義への共感が感じられたことは少々意外であった。やはりこの時代を大きく左右したのは共産主義思想であったのだ。そしてその呪縛をかれらも逃れられなかったということか。
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