日本の数学は、純粋数学にかたより、アメリカやイギリスで重用しされている応用数学や統計学は、理学部数学にはなく工学部や経済学部でひっそりと研究されている。はっきりって数理科学が十分にはそだっていない。本書は、その意味でもきわめて重要な事典である。物理学だけでなく経済/社会科学、生物学など幅広い分野での数学の活躍をきちんと分かりやすく解説し、制御工学、情報科学などもふくめて、基礎もきちんとカバーし、バランスのとれた構成になっている。
本の数年前に編纂された数学辞典や物理学事典をみてみればよい。たとえば生物学での数理的な扱いは、断片的に紹介され、それぞれの分野でどのような数理モデルが、理論的研究がなされてつかわれているのかということがまったく読み取れないようになっている。生物学以外の、たとえば経済学とか制御工学でもそうだとおもう。
本書はことなる。対象分野での問題がきちんと紹介され数理モデルがどのようにやくだつかが筋道がたって説明されている。その意味では、日本の他の書物にはなく、日本の数理科学を立て直すために、もっとも重要な貢献になるだろう。