このムックに掲載されている50冊が、震災後の生き方をより良くするのだろうか。こんな疑問を持って本書を手に取った。茂木健一郎氏はタレブの『ブラック・スワン』を引き合いに「ブラック・スワンの前に平等に無力な専門家と素人が団結することの大切さを訴えています。(P34〜P37)
美馬達哉氏は「東日本大震災が特別な出来事である」という見解に異議を唱え、本書の編集意図に疑問を呈しながらも、「震災以後」をニュートラルな意味で解釈し、災害を巡る様々な詩篇や著作を紹介しています。
本書の中で、比較的多くの論者が取り上げているのが、ヴォルテールの『リスボン大震災詩篇』であり、それに対してルソーが送った『手紙』です。大災害が新しい思想的潮流の発端になった例としてあげられていますが、今を生きる私には、東日本大震災をどのように解釈したらよいのか分からないというのが現実です。前向きに解釈し、今後のより良き発展につなげなければならないとは思いますが、視覚メディアの発達している現代は、被災の状況から被災者の方の表情までが手に取るように分かり、なかなか前向きになれない現実もあります。
防災大国と言われる国の震災犠牲者が約3万人、豊かな国と言われる国の年間自殺者が約3万人。これは何かの符合でしょうか。共に我が国の姿です。如何に幻想に満ちたマヤカシがまかり通っているか。再検証しなければなりません。
ヴォルテールの時代とは違った社会環境の中で、新しい思想的潮流が生まれる可能性は高いと思いますが、それは復興が軌道に乗って初めて真の姿を表すのではないかと思いました。