全般的に言うと、2008年のチベット騒乱に際して、中国政府の受けた批判が不当であるという主張がなされている。
この本には、14編の文章が収録されている。多くは論文の形式を取っているが、孫歌の「『総合社会』中国に向き合うために」は講演をもとにしているし、山口泉の「人権の彼方へ」はフィクションである。
書き手によって論調は異なるが、ほとんどは中国政府に対して同情的な書きぶりをしている。その反面、チベットが受けた被害についてはあまり語られていない。この本でしばしば指摘されているのは、欧米諸国には、チベットに対する憧憬があり、それが一種のオリエンタリズムとなり、中国批判を強める原因になっているということである。また、欧米による「人権押しつけ」を批判する内容もしばしば見られる。そして、欧米と中国は、歴史も文化も違うのであって、その違いを理解しない限り、チベット騒乱についてのすれ違いが終わらないとしている。