問題を提起するような題が各章につけられているにもかかわらず、書いてある内容は、専らその問題を検討するに際して必要となるであろう知識の紹介である。もちろん著者自身の考えも見られなくもないが、割いてあるページが少ないため、説明不足で少々独断的に見える。要するに多くの事柄、思想について言及しようとしたせいで、まとまりが悪くなってしまったのだろう。個人的にはせっかく各章大々的に問題を提起したのだから、知識はほどほどに、倫理学の諸問題を検討していく過程の面白さなどが伝わるように工夫して欲しかった。
もっとも、これから倫理学を学ぼうとしている人にとっては比較的良書なのかもしれない。確かに入門書としては嬉しい情報量であるし、テーマごとに参考文献が多く記載されていて役に立ちそうである。とはいえ「難しい述語や学説の違いを知るより、現代の倫理学者達の議論の中身に入ってもらいたい」という筆者の狙いは、残念ながら失敗しているように思われる。よって辛口ではあるが星2つとする。