サッカーの国際試合などで、国名を多少耳にする機会も増えましたが、「〜スタン、〜スタン」と名前を覚えるだけでも大変で、地理的な位置もすぐにはピンと来ない、中央アジア諸国。個人的には、シルクロード的郷愁や、トルコ系〜アジア北方系民族への親近感もあって、昔から少し気になる国々でした。本書は、それらの国々がたどった歴史的背景と今日的課題について手際よくまとめられた良書です(とはいえ、単一民族説や一元的王朝交代論になじんでいる日本人には、パパッと理解できるようなものではありませんが)。
特に旧ソ連時代の、言語・国境・戸籍・宗教組織・学術理論等の人為的操作により推進された民族分断政策と、それらの悪辣な手法がソ連崩壊後も再生産されて、大統領の個人崇拝や、特定集団への利権の集中と固定化などを招いているところなどは、まさに悪夢としか言いようがなく、安穏とした日本の風景からは想像もできない世界です。
同時にこれらの国々は、石油・天然ガスなどの豊富な資源や、アフガン・イラン・イスラエルなどの近隣諸国間の対立や政情不安を背景にした大国の思惑が錯綜するエリアでもあり、こういう複雑怪奇な状況をみせられると、日本の外交なんて楽勝じゃん!と思えてくるほどです。
それにしても、旧ソ連時代に人工的な「共和国」が幾つも創設された経緯については、日本や欧米の近代国家(ネーション)の成立過程や、さらには白村江の敗戦から倭国→日本への転換、唐からの独立を目指す動きが出たことなどと対比することもでき、「国家」というものが常に外交関係の中で意識的な内的統一を要求されて成立する、一種のフィクションであることがよくわかります。