なぜ、これほど「世界の工場」といわれながら、中国から有名ブランドが出てこないのか。そして、なぜあれほどのブランド力を持つ日本企業が市場を席巻できなかったのか。本書を読み、大いに納得がいった。
著者が本書で例示した電気機器、エアコン、パソコン、携帯電話、車はどれも日本では基礎開発から完成品生産まで内製ないしは部品会社と共同開発してしまう。値段は高くなるが、ブランド力もあるし、使い勝手がよい。しかし、中国人は安さを追求する。そのため、中国企業は車のエンジン、エアコンのコンプレッサーという基幹部品でも外部から購入してしまい、部品の組み立てに専念する(この状態を著者は「垂直分裂」と評する)。そのため、どこのメーカーもベースは同じとなり、激しい価格競争になった。価格競争についていけず、日本企業は高級品に特化せざるを得なくなり、シェア競争からは脱落した。その代わり、組立工場に供給する部品が販売の中心となり、利幅を厚く取っている(コンプレッサーは日系5社で寡占状態という)。つまり、シェアという名を捨て、サプライヤーとしての実を取った訳だ。
著者は、これは中国企業が安いものに引かれる中国国内の市場に適応した結果で一部先進企業に自主開発の動きがあるものの、当面は「組立工場」状態が続くと予想。日本企業のより深い参入のために、基幹部品に最適化した関連部品を設計、販売することを提案している。
著者が認めるとおり、藤本隆宏の強い影響下にある人で、本書には「モジュラー型」「インテグラル型」などの記述が散見される。藤本の本を読んでいないと、ちょっと読みづらさはあるかもしれない。