ブータンと言えば、前国王が、GNP(国民総生産)に対抗する「豊かさ」の指標として「GNH(国民総幸福量)」という考え方を提唱したことで有名な国だ。
物理的、経済的に豊かになることが、必ずしも人々を幸せにするとは限らない、とする。
「幸せ=財/欲望」であり、「欲望は人間が受け取る情報量と比例して増大する」と主張するのである。
そのような主張を持つブータンとはどんな国なのか、多面的な視覚から、国の現状を詳しく伝えようとしているのが本書だ。
この本では「ブータンはスローライフの楽園!すばらしい!」とか言ってないで、ちゃんと現実を書いている。
ネットのどこかで「GNHを提唱しているブータンには自殺者が一人もいない」なんて書き込みを見かけたけど、そんなことはなくてわずかだけどいるし、農村部の女性に自殺者が多い、なんてことも書いている。
それでも、著者はブータンに可能性を見出しているようで、そういう抑えた主張に説得力がある。
この本の細かな記述を総合しても、貧しい国なのは確かだが、不幸な国であるようには見えない。
ブータンが楽園だ、とは思わない。
だが、資本主義経済の最先端にいる我々日本の現状と比較する隊商として、非常に興味深い、と言えるだろう。