英和・仏和・独和など主要外国語辞典のレベルに迫る、本格的なデンマーク語辞典が出現した。
「デンマーク語・日本語」部分における語釈・語法・発音・語源など、辞典の中心的な機能と情報量において旧版を大きく凌駕しているのは勿論だが、本辞典の最大の特色は「日本語・デンマーク語」の部分と「付録」の充実ぶりである。
例えば「日本語・デンマーク語」には、次のような例文が載っている。
*「デンマーク語は童話という創作形式にピッタリ合う言葉だ」(「デンマーク語」の項)
*「私の人生は一篇の美しい童話である」(「童話」の項)
*「旅することは生きる事だ」(「旅」の項)
これらはいずれもアンデルセンの言葉である。本辞典は、単なる語学辞典の枠を超えて、「名句辞典」としても使える。またこんな例文も載っている。
*「雀の子、そこのけそこのけ、お馬が通る」(「スズメ」の項)
辞典というと、無味乾燥・没個性的なものと考えがちだが、決してそんな事はない。ただこれまで、執筆者側にそれだけの知見と自信が欠けていただけである。
「付録」には、文法概要・語史・ことわざ・人名・地名からデンマーク国歌まで収められており、さながら「デンマーク百科事典」である。
強いて難点を挙げれば、「デンマーク語・日本語」部分の語源欄の不統一。これだけ本格的な辞典なのだから、全篇を通じて一人の専任者に担当させるべきではなかったか。しかし、これは大方の利用者にとっては全く問題にはならないであろう。
そして最大の問題点はやはり「価格」。専門家や好学の士を除いてはなかなか手の出せない高値である。公立図書館および大学の図書館での常備を強く希望する。デンマーク語が充分に理解できなくとも、頁を括っているだけで「日本人にとっての外国語辞典とは何か」を考えさせられる良質な一品である。