本書は入門書として、確かにクラインの原著を読むよりはかなり分かりやすくなっ
ているのだが、まだまだ初学者の自分には平易に書かれているその裏側が分からず、
表面的な理解しかできていないような、そんな不十分さをも感じるところもある。た
だ、これは本書の悪さというよりは、私の理解力の乏しさゆえであると思われる。
しかし、深い分析体験をしていない私のような初学者であればもしかしたら少なか
らず上記のような感想を持つ人もいるのではないかと思われる。
というのも、クライン理論は言語獲得以前の乳児の対象世界を言葉で説明しようと
している。その為、言葉は体験そのもの現象そのものを包含することができず、さま
ざまな要素が零れ落ちてしまっているのである。その零れ落ちてしまっているものを
拾い起こすには、読み手の臨床体験・分析体験が必要となってくるのではないかと思
う。
そのような臨床は週4回以上の分析をしたり、境界例や精神病といった病理の深い
患者との面接の中でしか体験できないのかもしれない。そして、それはまさしく「体
験する」としか言いようの無いものであり、言葉で説明したり、思考したりすること
が極度に難しい世界である。
そして、そのような極度に難しい世界のことを無理矢理言葉で表現しようとしてい
るところにクライン理論や対象関係理論の難解さが現れてきているのだと思う。
あと、メラニー・クラインの生い立ちについて本書では1章が費やされているが、
彼女の生育歴を何度繰り返し読んでも、かなり私自身が悲しみに包まれるような感覚
をもってしまう。これほどの喪失体験を幾度と無く繰り返している彼女は悲しみをど
のように受け止めていくのかでとても大変だったのであろう。そしてその大変さを克
服していく中で創造性といったものが生まれでて、今日のクライン学派というものが
出来上がっていったのだと思う。