大変優秀な本だと思います。論文として書かれているので、前半部分に関しては読み物としての面白さということはなく、専門家にとっては客観性の高い資料としての価値が高いと思われます。
しかし、第六章の結論はとても興味深く、中東地域全体の成長に一種の「もどかしさ」を感じる一般読者に
とっても納得のいく一つの答えが示されています。革命前のイランは明らかに異常な格差社会であり、それが解消される事は必然だったと思いますが、その後に現れた時代錯誤に見える「イスラム政権」の印象が肯定的に受け止められることは無く、直後のイランイラク戦争など、混乱した状況を遠くで眺める程度しかない日本では、革命の本来の目的が解説される事もありませんでした。
革命後のイランにとっての最大の収穫は、「地方都市及び共同体に生きる個としての意識の発達」と理解しましたが、これは肉体に例えれば、毛細血管にまで血が流れ始めたと考えて良いかと思います。さらに現在まで続く、中東地域全体の発展の問題ともからんだ本質的な問題だとも感じました。西欧列強の縛りから抜けきれず、いびつな発展を余儀なくされる地域にとって、時間はかかろうとも自からの手で果たした本来の民主化を叶えて行く事が結果的には世界にとっての利益ではないかと示唆する、国境を越えた主張を持つ本だと感銘を受けました。