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現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)
 
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現代アラブの社会思想 (講談社現代新書) [新書]

池内 恵
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

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   2001年9月11日、たまたまつけたNHKテレビで、ニューヨーク世界貿易センターに突入していく黒い機影を見た著者が、まず抱いたのは「ついに来るべきものが来てしまった」という気持ちだった。著者はまだイスラム政治思想史を研究する大学院生だったが、これは紛れもなくテロであり、犯人は残念ながら「イスラーム教徒である可能性が高い」と瞬時に確信し、「この先にアラブ・イスラーム研究者としての真価を問われる日々が待っていることを予感した」というのである。

   いったいイスラム原理主義は、どのような軌跡をたどって「9.11テロ」に行き着いたか。著者は、アラブ社会思想が2つに分極化した「1967年」を起点として、その道筋を跡付けていく。この年6月、イスラエルの電撃作戦によってエジプト・シリア・ヨルダン軍が撃破された。いわゆる「六日戦争」だが、この決定的敗北を画期にアラブの知的状況は「危機の時代」を迎える。つまり、アラブ現代思想は、敗北の原因を「人民勢力」の疎外に求める思想と、イスラムの倫理に反した腐敗政治に求める思想に分極し、前者は人民解放闘争を唱える急進的マルクス主義へ、後者は過激なイスラム原理主義へと伸長していく。 しかし、社会主義イデオロギーは事実上機能しなくなった。著者は残されたもう一つの思想である「イスラム主義」の非現実性を、コーランと「ハディース集(ムハンマドと教友の対話)」の今日的解釈にメスを入れながら丹念に摘出する。そして、現代アラブ世界にコーランの「終末論」と現代的「陰謀史観」のオカルト的結合の出現を見て取り、これを「危険な兆候」と警告するのである。

   著者が本書の冒頭でいみじくも言っているように、「9.11同時多発テロ」のあと、無知や誤解にもとづいた荒唐無稽な議論が信頼度の高いメディア上にも現れ、「どうせみんなも知らないのだから、なにを言ってもいい」という「自称アラブ通」のアラブ論、イスラム論がまかり通っている。まさにそういうイスラム論の悪影響を案じたのが、この本を書いた動機であるという。本書の内容の大部分は、著者が「大学院生時代に行った調査と資料収集」にもとづいているということだが、アラブ思想の地層深くボーリングのパイプを下ろした観察と、アラブ社会の「時代の気分」の鋭敏な嗅ぎ分けが見事である。(伊藤延司)

出版社/著者からの内容紹介

なぜ今、終末論なのか。
なぜ「イスラームが解決」なのか。
学術書からヒットソングまで渉猟し、苦難の歴史を見直しながら描く「アラブ世界」の現在。

終末論の地層――イスラーム教の古典的要素にさかのぼることのできる要素の上に、近代に入ってから流入した陰謀史観の要素と、現在に流入したオカルト思想の要素が、いわば地層のように堆積して、現代の終末論は成り立っている。そして、イスラーム教の古典終末論の要素にも、また積み重ねがある。イスラーム教はユダヤ教・キリスト教から続く「セム的一神教」のひとつである。ユダヤ教とキリスト教が発展させた終末論体系を基本的に継承しており、両宗教から受け継いだモチーフがかなり多い。その上に「コーラン」や「ハーディス集」によってイスラーム教独自の修正や潤色が加えられている。――本書より

登録情報

  • 新書: 256ページ
  • 出版社: 講談社 (2002/1/18)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061495887
  • ISBN-13: 978-4061495883
  • 発売日: 2002/1/18
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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18 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
 本書は二部構成となっており、第一部では言説空間の「ラディカルな現体制批判から急進的なマルクス主義へ向う流れ」と、「宗教信仰への回帰現象や、そこから動員力を汲み取るイスラーム主義へと向う流れ」という二つの潮流への分裂が描かれている。前者の潮流に基づく「階級史観」はやがて挫折し、「陰謀史観」がそれに取って代わるようになる。また後者のイスラーム主義については、イスラーム「運動」と「全体社会」との隔絶に対する極端な楽観主義により、それが実践された際に必然的に生じる摩擦についての分析がなされている。

 第二部では旧来の終末論や陰謀史観、外来のオカルト思想などの総体としての現代のイスラーム終末論が描かれており、現世的な解決の放棄に起因するこうした「終末論」に筆者は危機感を覚えている。

 近代西洋社会が抱える様々な矛盾が露呈してきた今日、イスラーム社会の西洋的な価値観を相対化しうる可能性は注目に値する。だが、昨今の、とくに9・11テロ以降のイスラームについて論じられた本の多くは、過度にイスラームに同情的であるか、あるいは理想化しすぎているように感じていた。そうした中でイスラーム社会の行き着いた「思想的袋小路」を詳細に描く本書は異質であった。現実のイスラームを直視し、理解した上で対等なパートナーシップを築いていくことこそが「異文化理解」であり、本書は「異文化理解」への大きな指標になる。

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By recluse VINE™ メンバー
形式:新書|Amazonが確認した購入
結構読みにくい本です。この作品の論旨をたどるには相当の基礎知識が必要とされます。特にナセルの非同盟運動、70年代前後のパレスチナゲリラの運動があまりにも印象が強く残っている私には。著者は、袋小路に陥っているアラブ社会の知的状況をその状況的な並びに本質的な矛盾を中心に描きます。そして私たちとは隔絶した他者を赤裸々に描いていきます。所詮はイスラム世界においては、穏健派も過激派も、イスラムと非イスラムの価値的な平等を是認することがないという著者の指摘は絶望的ながらも慧眼です。日本のメディアにはこの悲劇的な対立の認識が根本的に欠落しているようです。fallaciのrage and prideとの併読をお勧めします。
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明晰な筆致 2002/2/19
形式:新書|Amazonが確認した購入
著者の、時代を見る目が明晰で確かであることに驚いた。まだ若い研究者であるらしいが、すごいと思う。
1967年の第三次中東戦争をポイントに、アラブ世界と、マルクス主義、日本赤軍などの絡み合っていく様が、見事に描かれている。アラブの人がイスラム原理主義に対して、ある種の共感を抱いている背景も納得された。すごい本だ。
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