現代医学の見地から王朝人に診断を下すという、ユニークな本です。有名な三条天皇の眼病、藤原道隆の飲水病などをはじめ、一般にはあまり知られていない歴代天皇・摂関・后妃・天台座主の病状と死因についても詳細に分析しています。
平安文学をよんでいて、「この病気ってなに?」と思うことがあるでしょう。たとえば源氏物語に、源氏が「瘧病」にかかって北山の聖に祈祷を頼みに行き、それが若紫と出会うきっかけになる場面がありますね。その「瘧病」は、本書の第一章「疾病の解説」に風病・寸白・飲水病・霍乱・胸病などとともに説明されています。
おもしろいのは、「もののけ」も、疾病の一種類としてあがっていることです。あの時代、もののけの仕業とされたことも、多くが心理の問題でしょう。本書にも描かれる冷泉天皇の「狂ひ」は、とんでもない精神病だと思いますなあ。
出産でなくなる女の多さに哀しくなったり、もののけの跳梁に人の心の弱みを見たりして、花やかに見える貴族でも常人とかわらない病気の懊悩があったと思うと、王朝貴族がずっと身近になる本です。