表紙の雰囲気が気に入ったので購入してみました。 あらすじを見て「お金がないっ!」(幻冬舎)のような、力に物言わせて思い通りにしようとするような、暴力的展開になるのかと予想していたのですが、そうではありませんでした。
第二王子ハーリドは、奴隷の競りで日本から誘拐されてきた貧乏美大生・鈴木圭一を奴隷として買い取りますが、圭一を家の敷地から出さないということ以外は特に何も強要しません。せいぜい弟に日本語を教えろとカタコトの日本語で言ったくらいですか。 ハーリド含め周囲は圭一を寵姫(恋人?)扱いしますが、ご本人はいまいちわかってないどころか、「寵姫」の意味を知って腹を抱えて爆笑しているところが嫌みじゃなく面白いです。ハーリドも口数が多い人間ではないので、周りの人間が見ていてわかることも、圭一本人には伝わりにくいのかもしれないですね。そういった出来事が何度かあります。
二人きりの「今ここだけ」の世界だけでなく、ハーリドを包みこむ因習や、圭一の日本への後悔と思慕の念が描かれているのが魅力でした。もちろん、ふたりの穏やかにゆっくり進む関係も。
難点を挙げるならば、服については全体を描くようにして欲しかったです。和服や洋服ではないので、体のどこの部分にあたる紐をといているのか、といった見当がつきにくいのです。 あとは、一冊丸々一つの話を描いていただきたかったです。できるならこの後も読みたいと思わせる話でした。