実在の人物と架空の人物を上手く組み合わせ、様々な当時の事件を組み合わせ、エンターテイメント性の高い作品になっています。
とは言うものの、そこはキリスト者遠藤周作です。アニエス修道女を登場させ、彼自身の意見を語らせ、主張しているようです。
フランス革命という大きな時代の変換期にたまたま居合わせてしまったという不幸だけで、マリー・アントワネットの生涯を片付けてはいません。彼女の性格、ルイ16世との関係など、丁寧に描いてゆきます。その上で、37歳の若さで断頭台の露と消えた彼女の人生の必然性を語っています。そして、最後にはアニエスに祈りを捧げさせています。これが、彼女に対する作者の気持ちでしょう。
アニエスは、他にも修道会のあり方にも批判の声を上げています。キリスト教本来の心を忘れた修道会を彼女に去らせているのも作者のキリスト者としての心でしょう。
又、革命へ突っ走る大衆が暴力に酔ってしまうのにも反対の意見を述べ、ついにはマラーを殺させています。このあたりは、マルグリットをマリー・アントワネットと対比する人物として丁寧に描いているのと相俟って、大衆というものの性格に対する作者の考えでしょう。
それにしても、この本を読むだけで、フランス革命の全体像が纏まった形で見えてきます。その意味でも、面白い本でした。