飛びぬけた才能を持って産まれたわけでもないし、
強固な意志があるわけでもない、サイキックなわけでもない。
「自分は生まれてきてよかったのか」すら分からない。
そんな女の子がよしもとさんの作品の主人公になるのはすごく珍しい。
「王国」シリーズの主人公だった「雫石」の娘・ノニを、こういう人格に設定するとは意外。
本編では語り手であり、絶対的な存在であった「雫石」も
娘・ノニから見れば不完全な母親であり、悪いところもあった。。。
そういう多角的な視点に、ばななさんの新境地が拓けたと感じた。
お子さんを育てている影響でしょうか。
とはいえ、やはりばななさんの小説。
優しいばかりの物語では決してない。
「パパ」である楓から娘ノニへの遺言。
ラストを飾る「パパ2」であるところの片岡さんの言葉。
濃密すぎて読んでいて息苦しくなったほどだ。
終盤、キノとの出会いにより失恋の傷が癒えてきたノニが
「命があるから生きているのであって、なにかを成すためにいきているのではない」
と悟る場面に涙。
今までのばななさんなら書かなかった一言ではないかと思う。
ばななさんが描いてきた「強い人たち」「特別な人たち」「研ぎ澄まされた人たち」
「サイキックな人たち」「正しい人たち」のいずれにも自分が当てはまらないことに
実はちょっとした悲しさを感じてきた。。。という人には是非読んで欲しい一冊。