著者については、『とかげ』などずっと以前に感銘を
受けた作品があり、たいていの作品を読み続けています。
しかし、もうかなり長い間特に感銘も受けず、作品が
異なっても金太郎飴のように延々と続く世界観に惰性で
付き合ってきていました。
『王国シリーズ』については、第一作が発売された直後に
単行本で読んだものの特に印象に残らなかったため、
続編については敬遠を続けていましたが、せっかくだから
コンプリートしようと文庫本で第二作と第三作を購入し、
第一作の再読から通読しました。
作を重ねるごとに苦痛が増してゆき、この第三作ついては
何とか意地で読み通しましたが、呆れるほどの虚無感が
残りました。
『王国』とはよく名付けたもので、これまでも少なからず
違和感を抱いてきていた著者独特の世界観がこれでもかと
言うぐらいに畳み掛けてきて、その押し付けがましさで
息が詰まりそうでした。
ささやかに自分の世界だけで生きているかのような
主人公は、しかし、その実は傲慢な世界観を持っており、
その精神世界の中ではまるで肉食獣のようです。
周囲の人間との関係性に感謝しながら成長していく
という描かれ方をされてはいますが、彼女が受け入れて
いるのは自分自身の価値観を肯定してくれる人達ばかり
であり、そのコミュニティはまさに彼女の王国です。
彼女自身の価値観が否定されてしまうと彼女が感じる
ような行動をとる人達は彼女にとって悪しき者であり、
関わる価値が全くない人間として断罪に近い描かれ方を
されています。
著者と一対一で相対しているかのような濃密な感覚を
味わえる読者も居るのかもしれませんが、私は、
エッセイ等でならともかく小説という表現形態の中で
ここまで作者から説明口調で物事を決め付けられたくは
ありません。
この間惰性で読み続けてきていた中でずっと感じていた
薄霧のような違和感が、この連作を読むことによって
明確な形を成しました。
私がかつて感銘を受けた著者の作品世界は強靱に深化
しているとは思います。
しかし、それは私が期待していた方向ではなかったようです。
もう著者の作品を読むことはないでしょう。