「美形女形おしのキワモノ映画?」と思って見ると良い意味で裏切られ、意外なほどの質の良さ・主題の真剣さに驚きます。
王も愛妾も芸人も、自らの身分と因襲に縛られた存在であったその時代。それぞれに課せられた運命に、背く者・反発する者・あがく者。
抗って抗って、抗った挙句に力つき、滅びに向かってゆくひとの存在はあまりにも小さく悲しく、また、その中でただひとり運命を受容する者である女形・コンギルの存在が、愛され執着されるが故に人々を滅びの渦に追いやってゆく図式は、どうしようもなく皮肉で哀れです。
チャンセンが渡る綱は空と地面の狭間にあり、
女形であるコンギルの存在は男と女の性の狭間にあり、
最下層民の芸人であるその身は人と人でない者の狭間にあり、
王は天と人民との狭間にあり、
愛妾は母と女の狭間にあって。
自分の両端にあるどちらの世界にも属せない、いわばグレーゾーンの中で生きることを運命づけられた人々の心理描写は繊細で美しく、また、劇中に登場する綱渡り・盲人芝居・仮面劇・人形劇といった芸に込められた暗喩と、それらが映画のイントロとラストで対比して上昇のスパイラルを描いてゆく構成も見事です。
ただ、この映画、
粗筋だけ追ってゆくと悲惨とも思える筋立てではありますが、個人的にはこれは希代のハッピーエンドだと思っています。
(コンギル役のイ・ジュンギも雑誌のインタビューでそう言っていましたが。)
どうハッピーエンドなのかは、最後のシーンで。