本作品の元のバージョン(邦題『やぶにらみの暴君』以下では『元版』と呼ぶ)は監督ポール・グリモーの意に添わぬまま1953年に強引に公開されたものだが、元版は公開当時あるいはその後の日本のアニメーション作家達に大きな影響を与えたという。
その影響の大きさと評価は「世界と日本のアニメーション150」(2003年、ふゅーじょんぷろだくと刊)の中で5位という極めて高い位置にあることでも分かる。また、元版を見た時の感動の一つを『世界アニメーション映画史』(1986、伴野孝司・望月信夫共著。感心のある人はwww.anido.comへGO)で読むことが出来る。
私の場合には上のような歴史的位置を知りつつ本作品を見るわけであるが、そういう歴史的価値を除いても、かなり楽しい、というか面白いというか、そんな作品である。特に音楽が良い。非常に優雅な音楽が作品全体の上品な雰囲気を支えており、さすがフランス、と思ってしまうのはステレオタイプ的な受け取り方であろうか?
空まで飛んでしまう警官隊、王のペットの子犬や近衛長官(?)など、脇役キャラのユニークさも秀逸だし、複雑な構造をした城の中での追っかけなど(作品内容の本質的な所かはともかくとして)見所は多い感じがする。
ストーリ全体に関しては、さすがに元版から50年も経つと「歴史的遺物」という感じがしないでもないし、その展開(特に後半)の仕方もかなり突拍子もない気がしないでもないが、この程度ならまだ御愛敬。監督グリモーはもっと尻切れトンボだった元版に不服で、20年もかかってリメイク版として出したのが本作品なのだから!
歴史的価値の作品として楽しむか、日本アニメへの影響を見いだして楽しむか、純粋に内容を楽しむか....見る方のお好み次第と言ったところであろう。それにしても監督が破棄して回ったという『元版』も見てみたいものである。