主要国際映画祭での受賞やジャパニメーションなるカテゴリーの確立など、今や一部のマニアのみならず、世界的評価が定まった感のある日本アニメ。中でもスタジオ・ジブリは、子供が楽しめるだけでなく、大人までも十分に唸らせてしまう質の高い作品群で、そのジャンルを牽引してきたと言えます。
私も「ルパン三世/カリオストロの城」を初めて観た時は、その完成度の高さに驚嘆しましたが、ずっと後になってDVDで「王と鳥」を観て、実は元ネタとなる作品が既に存在していたということに気付かされました。特に、孤独な独裁者が暮らす城の構造や様々な独創的な仕掛け、はかなげな少女への横恋慕など。
彼らの制作のモチベーションの発端に、フランスのポール・グリモー監督による唯一の長編「やぶにらみの暴君」(後に「王と鳥」に改作)があることは、もっと知られてよいでしょう。それは、ジブリ作品のオリジナリティの根底を疑うということではもちろんなく、世界アニメ史の正統な継承者として日本人が活躍していることを誇りに感じるべきだという意味で。
本書ではまず、その粗筋が紙芝居風に紹介されますので、未見の方でもご安心を。続いて、映画のデータやテーマの解説が4編収められています。
前記DVDも監修していた高畑勲氏が、作品から受けた影響を熱く語る最後の1編がやはり印象的で、執筆ではなくインタビューを元に書下ろされているのも、より生々しい興奮を伝えます。初公開作と改作の相違ばかりか、かつての日本語訳でうまく伝わらなかった部分を訴える様子は、この作品に対する世界で一番の理解者だと思えるほどです。
宮崎駿監督が主に画面構成やフル・アニメーションによる動きに直感的な影響を受けた一方、高畑勲監督は詩人ジャック・プレヴェールによる脚本まで含めて映画に込められた思想に共感し、孤高の作品づくりにおける精神的支柱となっていることが分かりました。