地球に似た、いくらか重力の小さな世界を舞台に、獣と共に生きることを決めたエリンと過酷な運命との相克を描く大河小説の第3部(全4部)です。
第2部の終幕から10数年、かつてエリンの母が刑死する原因となった闘蛇の大量死が再び起きます。一児の母に、そして生物学の教師となったエリンは、原因の調査を命じられます。結果、闘蛇と王獣の人工繁殖を阻むメカニズムが明らかになり、王獣規範や闘蛇衆の掟の存在理由、建国神話の謎があらためて浮かび上がります。そしてリョザ神王国の内外にある政治問題に、否応なく巻き込まれていく。
前半は探求系のドキュメンタリーやミステリー小説のような趣き。闘蛇も王獣も架空の生物ながら、地に足の着いた記述が積み重ねられており、地道な調査を通じて次第に謎が解き明かされていく過程にワクワクします。後半は一転して、逃亡劇に。希望を求めて神々の山脈を目指すエリンと、後を追う家族の歩みが胸に迫ります。
「獣の奏者」はエリン10歳から19歳までを描く「I 闘蛇編」「II 王獣編」でいったん物語は収束、30歳以降を描く「III 探求編」「IV 完結編」は新たな展開を描きます。闘蛇編・王獣編には
講談社文庫版(ルビなし)と
青い鳥文庫版(総ルビ)があります。単行本のルビ付けはその中間で、10代前半向けの書籍相当です。