外資系投資銀行エイブラハム・ブラザースで野望を抱く日本人バンカーの話だが、それに止まらず90年代以降の金融市場史にもなっている。
自分の生家を追い出した東立銀行への復讐を誓い、エイブラハム・ブラザースでパートナー、マネジメントコミッティのメンバーを目指していくが、その先に待っていたものは何なのであろうか。
雰囲気で言うと「
ハゲタカ(上 講談社文庫)」辺りが好きな人にはたまらない内容になっている。
ただ、外資系銀行のパートナーになると資産が数百億になり、ポルシェを買うのも何とも思わなくなる的な記述を見ると、まじめに働く意欲が失せる人も多いかも。
実名と架空名の銀行・会社が混在しており、フィクションかノンフィクションか一瞬頭が混乱する。
架空の登場人物の名称は、竹川平蔵、西脇一文、榊英介などのように、モデルとなる人物が容易に想像できるような名称設定になっている。
帝都鉄道も何を指すか一目瞭然である。
おもしろいのは、登場人物の心理と時代背景の分析である。
・敵対的買収のアドバイザーなどは行わないとしていたエイブラハム・ブラザースも、社内の突き上げで、取り組まざるを得なくなった。
・投資銀行のスタンスは、白と黒のボーダー上を歩くこと。黒でなければ、基本何をやってもよい。
・投資銀行の業務は、「エージェンシー業務(証券の引き受けやM&Aのアドバイスのような仲介業務)」から「プリンシパル業務(自己勘定取引)」に傾斜
悪い作品ではないが、「
トップ・レフト―都銀vs.米国投資銀行 (祥伝社文庫)」を読んだときの印象の方が鮮烈だったかもしれない。