事件と関係者への悔恨、家庭の父としての焦燥感、「先生」と呼ばれる立場と1人の囚人が受ける処遇のギャップ…。それらが交錯する複雑な思いを抱えつつ、子細な日記調の記録に当事者の発言を加えて、騒動の舞台裏を淡々と綴る。事件が発覚した当時は、「永田町の常識」に照らして犯罪行為という認識がなかったと告白。しかし、メディアを賑わす糾弾記事や、東京地検特捜部検事とのやり取りを通じて、事態に対する底知れぬ恐怖心が時々刻々と肥大化していったと言う。
獄中生活は、それが元議員の体験とは信じ難いほどすさんだものだ。心身に障害を持つ受刑者の世話係に配置され、汚物処理作業や下の世話に従事する様子や、「お前、自分を捨てたな」と笑う看守らの目に見えぬ圧力が冷静なタッチで記されている。
(日経ビジネス 2004/02/09 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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逮捕に至る過程での葛藤。そして、入獄してからは受刑者や看守との日々のやりとりの中で生じる喜怒哀楽が、衒うことなくとてもリアルに表現されていた。障害を持つ受刑者の下の世話をする場面でも、著者の息遣いが間近に聞こえてくるかのようである。マスコミ報道に乗じて、安易に勧善懲悪の図式を受け入れてしまう私たちには、その裏にある等身大の人間を知ることの大切さを改めて気づかせてもくれる。他の方も述べておられたが、大げさではなく「夜と霧」現代日本版としての価値も十分にあると思う。
また、受刑者の受刑期間終了後に受ける社会適応支援・再就職支援についても持論を展開している。現段階では受刑期間終了後にサポートしてくれる親類・知人がいない場合は、なかなか通常の生活に戻ることができず、再び犯行に及んでしまう確率が高いことを著者は指摘している。あまり光の当たることのない受刑者の実態について、著者の実体験をふまえて鋭く迫った結果といえよう。
詳しくは書けないが、身体障害者の受刑囚の介護を行う寮内工場での刑務作業を通じて、筆者の魂が浄化されていく過程が丁寧に、そして感動的につづられていたのだ。
また、刑務所内で知り合った様々な囚人や刑務官の描写もよく書けており、主要な登場人物が「キャラ立ち」しているのもよい(ただし、刑務官については少し甘い印象があると感じた。刑務所側も元国会議員である著者の処遇には配慮している様子がうかがえる)。
さらに、刑務所が運営されているシステムについても通読すれば、一通りのことは理解できる。
この本は、『夜と霧』や『イワン・デニーソヴィッチの一日』と並ぶ「監獄記録文学」の名作であると思う。淡々とした記述のなかから漂う文学的な香気、そしてある種の哲学すらある。
特に、政治家や福祉の仕事を志す若者には是非読んでもらいたい。
蛇足。本書を読む限り、著者は罪人ではあるが決して悪人ではない。
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