毎度のことだが、新聞やテレビでは事件を掘り下げることはしない。雑誌は書くが、ドラマチック仕立てにしたがり、本当のことはよく分からない。確かに本書は淡々としている。書く人が書けば、被害者の立場ならお涙頂戴的記事になるだろうし、加害者なら中国人妻の生い立ちから、日本での過酷な現状など、あるいは中国人妻を糾弾する内容にもなるだろう。そのいずれでもない本書のとる立場は、ただ加害者となった中国人妻の言い分を聞くということである。幼稚園への送迎方法の是非についても触れない。取材を試みて拒絶されたのかもしれないが、殺された児童2人の親の話もない。登場する人物はみな、中国人妻側の人だけだ。その不備はやはり大きい。そのせいで本書はどうしても平板になっている。しかし、事件後の中国人妻のことをここまで追いかけたメディアが見あたらないことを考えると、その価値は小さくないと思う。