風野真知雄さんの新作読みたさに「小説トリッパー」誌を買っていました。二回連載が終わったところで、書き下ろしや別連載ものも加えて、早くももう一冊に!
改めて読み直してみますと、やはりあとに書かれたものほど、どんどん脂がのってきて、笑えます。
風野真知雄流のユーモアの本質は、あざとさや痛烈さではなく、「天衣無縫」のういういしさです。全部で十席の噺ですが、せりふが多めの小説といった体裁で、しかもせりふのうけわたしの転びかた、外れかたが「天然」におかしい。
「下げ渡し」はまじめな大工の政五郎が、くの一のしのぶを下げ渡されて会話がおおどかにずれまくり、「無尽灯」では四人が読んでいたトンデモ本がまじりあって、さらに報復絶倒の噺になってしまう。この中の一冊、「八犬伝」ならぬ「三犬伝」は犬沢チン、犬田ポチ、犬井牙左右衞門が三万匹の野犬と戦う噺で、読んでいたのが電車の中でなくてよかったです。吹いてしまいました。
そんな風野流の動物の描きかたの愛らしさは「化け猫屋」「猫見酒」にも見られます。愛猫家に、死んだ猫の生まれ変わりを高く売りつけるばあさんの噺と、猫を追っかけて酒を飲む四人の職人たち・・・
天然素朴な人情噺としては「けんか凧」や「百一文」、そして「編笠息子」の謎解きはサゲも含めて絶品です。
書き下ろしのラスト「苦労寿司」は寿司を握りながら、これまで経験した職業(歌舞伎役者や相撲取り)がいかに自分の寿司に活かされているかをまじめくさって語るおやじさんの法螺噺、これはぜひ高座でどなたかにやってもらいたいもの。例えば三遊亭竜楽さんあたりに。