猫絵を描く十兵衛と相棒のニタが、市井のいろいろな事件に出会って行くシリーズ、もちろん化け猫関係はおもしろかったですが、これまでは、犬の子を育ててしまう雌猫とか、主人のために尽くす猫、三味線になってしまったおっかさんを尋ねる猫など、猫キャラの強さ、いじらしさを追ってゆくものが多かったような気がします。
絵柄からにじみでる猫の愛らしさ、そしてあの「猫笑顔」。猫の気持ちを抱きしめられるマンガでした。
今回は、たとえば「にゃんまみ陀仏」で実際にこの時代にあったお布施集めを扱っていたり、「トラ助の花見」でのとうがらし売りの風俗とか辰巳芸者の意地とか、社会的な、より広い視野で物語がすくいあげられているような気がしました。「いない猫」では、感性が鋭いけれどのらくらしている若旦那の生き方、「猫のお白州」では商家の吝嗇なおかみの生活(七夕のご馳走なども含めて)、「猫芝居」では芝居小屋と、人間がわのやるせない事情のほうにスポットライトがあたり、そこから猫を照らしだしている、そんな感じがします。
その意味では人間側に感情移入させられることが多く、猫の比重がやや軽かったかもしれません。
しかし江戸の風俗と猫がしっかりかみあっているのをみると、あらためて、ああ、これは漠然と時代劇なのではなく、また猫の生き方にだけスポットライトがあたっているのではなくて、「江戸時代」というリアルで具体的な世界を描くマンガだったんだ、と思いなおしました。
背景となる世界がもっとよく見えてきた、というのか、ちょっと別のアスペクトも入ってきたかなと思います。世界が厚みを増したというか。
前より少しコマ割りが大きくなった感じですが、このさき、この時代の社会性(オカルト以外の部分の)にどうつっこんでゆくのか、そちらも楽しみです。
それにしても、猫とひと、どちらもほんとうにあたたかくざっくりした線で描かれていて、大好きです。