シリーズの7作目の書き下ろし作品で『
偽物語(下)』の後,2学期の始まりからとなります.
『
猫物語(黒)』と対にも見えるタイトルですが,物語としては全く別のお話になっています.
まず最初に気がつくのは,視点(語り部)が本作のヒロインである少女になっていること.
逆にこれまで語り部役だった少年は,別の問題に掛かりっきりらしくほとんど登場しません.
ただ,これが合間合間にきな臭いニオイを漂わせ,本作にて詳しくは明らかにならないものの,
新しい人物の登場に加え彼らとの因縁など,『新章開幕!』にふさわしい『始まり』の1冊です.
そして語られる少女の物語は本物ではなく人物でありたい,変われたけれど変わらない物語.
過去作にして明かされた衝撃的な姿をさらに掘り下げ,なぜ完全無欠の優等生であり得たのか,
その事実にどのようにして気づき,受け入れ,どのようにして自分を生まれ変わらせていくのか,
終盤での『独白』はもちろん,それを支え続けたもう一人のヒロインの存在も強く印象に残ります.
最近の作品に見られたいわゆるメタ発言やパロディ系のユーモアはかなり抑えられており,
ツッコミ役の少年が不在のせいもあり,賑やかな掛け合いや雑談の類もほとんどありません.
それらを期待されている方には物足らないかも知れませんが,こちらもお得意の『言葉遊び』,
これが小気味の好さととも併せて巧く運ばれ,爆笑とはまた違う面白さで楽しませてくれます.
また,はじめはただのおふざけにも見えた『仕掛け』についてもちゃんと意味があったり,
それにまつわるメタ発言も,少女の抱えていた『弱さ』を意味しているようにも読めたりと,
これ以外にも序盤でのいろいろが畳まれていく終盤,裏の動きのいかにもな伏せられ具合など,
物語の内容はもちろん,一つの作品としてもなかなか良い仕上がりになっているように感じます.
続刊スパンの短さは心配ですが,ひとまず新シリーズはいいスタートを切ったように思います.