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18 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
久しぶりに小川ワールドを堪能できた,
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レビュー対象商品: 猫を抱いて象と泳ぐ (単行本)
小川さんの本は全部読んでいるが、久方ぶりにこの長編には満足した。主人公の少年はチェスの天才だが、大きくなれば(大人になれば)不幸になると感じ、自らの意思で体の成長を止めて異形の容貌の人間となり、からくり人形をかぶって対局している。そして、チェス好きの老人が暮らすホームへ流れ、誰にも気づかれずに短い生涯を閉じる……。こう書くと不幸な人間の物語にも思えるが、主人公は満足していたにちがいない。小さきもの、異形のものがひそかに湛えている美が、繊細な言葉で拾い上げられているからだ。「貴婦人Aの蘇生」にも似た、どこの国ともどの時代ともわからない不思議な時空には、甘美で確固とした世界が確かに息づいている。 小川作品には、耳とか刺繍とか数字とかスケートとか、独特のモチーフが繰り返し出てくるが、チェスが登場したのは数学の延長線上にあるためだろうか。チェス盤に描かれた棋譜が実際にメロディーを奏で、コマを動かすプレーヤーたちの恍惚とした表情が見えてくるような錯覚に、何度も陥った。じっくりと物語世界に浸ることができて、改めて本はいいなあと思わされた一冊だった。
15 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
リトル・アリョーヒンの、静かな冒険,
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レビュー対象商品: 猫を抱いて象と泳ぐ (単行本)
物語の後半から、とてもせつなくなり、たびたび涙を流しながら読み進めました。 馴染みのないチェスの話ときき、読むのをためらいましたが、 数学嫌いでも博士の生み出す数字の美しさが伝わってきたように、 きっとチェスを知らなくてもそれらが醸し出すメッセージを 受け取ることができるのではと思い、読み始めました。 実際、その通りでした。 全ての小さなエピソードが美しく細やかに織り重なっていて、 ここで物語の要約を書くことができません。 一言でいえば、猫と象と一緒に、リトル・アリョーヒンが静かに 進んでいった、冒険のお話し。 小川洋子さんは、社会的に弱い人や、不器用な人たちを 愛のこもった言葉と文章で丁寧に描き、 いつのまにか彼らの強さと美しさを読者に伝えることができる 素晴らしい作家だと、今回改めて思いました。
44 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
詩を紡ぐようにチェスを指す少年の物語,
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レビュー対象商品: 猫を抱いて象と泳ぐ (単行本)
一日のなかで、その本をひらく時間が、特別なひとときになる読書がある。あわただしい一日をすごしても、気がかりなことがあっても、ページをめくれば、いつでもその場所へ戻ることができる。 本書も、そんなゆたかな読書の時間を約束してくれる小説だ。 主人公の少年(のちに、リトル・アリョーヒンとよばれることになる)は、バス会社の敷地に置かれた回送バスの中で、8×8のチェック模様に塗られたテーブルに出会う。 そして、マスターとよばれる男にチェスを教わる。 それが、盤下の詩人、リトル・アリョーヒンの伝説のはじまりだった―― 小川洋子の小説は、刺繍でひと針ずつ描かれた絵や、気の遠くなるような時間をかけて織り上げられたタペストリーを連想させる。 どんなに短いエピソード、文章、言葉ひとつにも、選びぬかれそこに置かれた理由がある。 それはまるで、リトル・アリョーヒンの指すチェスの一手、一手のようだ。 詩のように美しい文章でつづられたこの小説の中で、特にきわだっているのは、やはりリトル・アリョーヒンがチェスを指す場面だ。 読者はリトル・アリョーヒンと共におどろき、手に汗をにぎり、盤上で奏でられるハーモニーに耳を澄ませて、深い満足を味わう。 64の正方形の上で、白黒それぞれ16の駒を動かすという「ただそれだけ」のゲームが、こんなにも奥ぶかいものだったなんて、と呆然とせずにはいられない。 物語のつづきを知りたい、早く結果を見たいという読みかたではなく、ページのあいだを、行間を、言葉と言葉のあいだをさまよい、一行読んでは目をつむってその余韻をたのしむ、という読書のよろこびを、最初の一行から最後の一行まで味わうことのできる名著。
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