警察犬や盲導犬、介助犬など、人と一緒にさまざまな仕事をこなす犬に比べて、猫は、まさに「猫の手も借りたいほど」と言われるように、何の役にも立たないイメージが強いし、猫好きにとっては、そういう猫の役に立たなさというのがまた猫の魅力のひとつであるように感ぜられていたから、このタイトルはとても意外であった。
本書には古今東西の働く猫のエピソードが紹介されている。猫の仕事で主だったものといえば、やはりねずみを狩ることで、特に、幕末から昭和初期にかけて最盛期を迎えた日本の養蚕業が猫によって守られたということが協調されている。当時の日本経済を猫が支えていたという記述は、猫好きな読者なら決して悪い気はしないだろう。
働く猫とはあまり関係のないエピソードも多く載せられているので、本書の全体的なイメージとしては、歴史上の猫と人との係わり合いというような印象である。それはそれで面白いが、中世ヨーロッパの魔女狩りで多くの猫が殺された事実など、目をそむけたくなるような話もある。
膨大な数の文献に当たって、よくこれだけの猫話を拾い上げたものだと感心するが、それに対する著者の主張にはあまりぴんと来ないものが多い。たとえば、中世ヨーロッパで広く行われた魔女狩りにともなう処刑よりも、同時期にパリの一印刷工場で起きた虐殺事件を「信じられない事件」として大きく扱っているのは、問題のとらえ方がずれているように思われるし、犬や猫が地震を予知する能力についての項では、遺伝子に関する理解の程度があまり高くないとうかがわせるような記述もある。
もっとも、エピローグで著者が、現代の人と猫との関係について、猫を人間の枠にはめるばかりでなく、少しは人間を猫のほうに合わせてみるのも悪くないと述べている点については、私も大いに賛成である。