猫というものが江戸や明治の頃も絵師や画家に愛されたのがよくわかる絵画集でした。
円山応挙の「群獣図屏風」、竹内栖鳳の「斑猫」、菱田春草の「黒き猫」、速水御舟の「菊に猫」、表紙も使用された稲垣仲静の「猫」など見事な絵画の中にしっかりと猫の存在が確認できますし、大切なアクセントとして、また主題として描かれているのを知りました。
奇才と称された長澤蘆雪の「綿花猫図」の猫はどこか不思議で個性的な顔をしていますが、蘆雪が描いているというところに値打がありました。橋本雅邦の「竹林猫図」も実際の猫を写生したとは思えない風変わりな表情をしていますが、雅邦作という希少性に価値があるのでしょう。
錦絵の世界では猫がよく登場します。本書を読む前に猫を描いた浮世絵の展覧会を観賞してきたばかりですから、その思いは実感しています。
歌川国芳は猫好きで10数匹を飼っていたということで、本書にも沢山掲載してありました。84ページの国芳の「日本駄右エ門猫之古事」は大判の作品で、実際目の当たりにするとその猫の迫力に驚かされます。現代でも奇抜な構図ですから、江戸時代の人はもっとそう思ったことでしょう。
48ページの月岡芳年の「風俗三十二相 うるさそう 寛政年間処女之風俗」での白い猫の描写は巧みで秀逸でした。
柴田是真の「猫鼠を覗う図」は可愛らしい猫の生態を上手く日本画に取り入れた作品で、その親しみやすい絵は明治も平成も同様の感覚で受け入れられることでしょう。
章立てです。凝視する可憐な猫たち、ナルシストの近代の猫たち、江戸から明治時代の繊細な猫たち、愛くるしい錦絵の猫たち、戯れつくユーモアたっぷりの猫たち、妖怪になった猫たち、擬人化された猫たち