1920年生れで高齢の今も活躍を続けているSF界の吟遊詩人ブラッドベリの最新短編集です。本書には1940〜50年代頃に書かれて発表されず自宅の地下に埋もれていた原稿と最新の2003〜04年執筆の作品が収録されており、ほぼ新旧交互に配置する並びになっていますが全く違和感なく読み進められます。一読して感じるのは、その軽い文体の読み易さで、内容的にはSF的設定は少なく普通小説が大半だという事です。テーマは男女の関係・人種問題・時間旅行・幽霊・異星人etcと多岐に渡り、決して深刻にはならず軽やかにユーモラスに描かれています。近年の作品の特徴としては、ノスタルジックな傾向が強く人生の晩年を迎えた著者の感慨が感じられます。全21編の内の私のお気に入り5編を紹介します。『さなぎ』黒人少年と白人少年のひと夏の友情物語でビーチでの日焼けが発想の素です。『酋長万歳』酔っぱらった上院議員がインディアン・カジノの支配人とアメリカを賭けて負けたら、というお話。『猫のパジャマ』深夜の道路で見つけた仔猫に同時に両側から飛びついた男女が、双方自分の物と主張して譲らず・・・・。『趣味の問題』とても友好的な異星人と遭遇した人類だったが、ただ一つの問題は相手が蜘蛛にそっくりな点だった・・・・。『雨が降ると憂鬱になる(ある追憶)』時間と記憶と歌にまつわる一夜が誰の人生にもある。それは一度きりで甘美な記憶は死ぬまで色褪せない。
著者の愛情のこもった冒頭の『序文−ピンピンしているし、書いている』では自作の成立に関わるプロセスを懇切丁寧に解説されており、老いても尚衰えない情熱に感動させられます。