大仏次郎さんがどんな小説を書いた人だったのかも全く知らずに手に取った一冊。内容は猫にまつわるあれこれを綴ったエッセイと小説1篇と童話が4話の構成になっている。エッセイはとにかく猫が好きでたまらない、と言うよりは淡々と猫との生活を送っている様子が見て取れる感じ。ご本人より奥様の溺愛ぶりや飼い猫(と言っても居候もいたようだが)だけでなく、旅先の猫に興味を持っている辺りは本当の猫好きでしょう。猫の好きな人は猫かわいがりはしないもの。日に日に増えてゆく猫たちに時には腹を立て、書斎は入れないなどのルールもある。
象徴的なのはいつの世も動物をかまわず捨てていく人がいるということ。エッセイにも何度となく登場し、心底腹を立てているのが分かる。いつの世も同じか・・。たくさんの猫の世話や食事にほとほと嫌気がさしている様子も動物を飼っている身なら人事ではない。こちらは1匹でも大変だったのに、と思わずにはいられなかった。
童話は子供向けであるためやさしい言葉で心温まる雰囲気。言葉そのものも古きよき時代を感じさせ、とても新鮮。小説も猫の暖かさが時代の冷え切った様子とうまく対になっているのように見え、さすがだな~と思わせる。全体に短い話ばかりで気軽に読める。小刻みに読む物としておすすめ。