どの話も突飛な展開をするのだが、登場するものはみな俗世間の考えで行動をする。そのギャップがどれも軽妙なユーモアを感じさせる短編集である。
著者はイタリアの児童文学作家。国際アンデルセン賞も受賞しているそうであるが、作品は初めて読んだ。毎日の生活に疲れてしまったとき、ちょっと口直しに味わうと良いような、辛さも苦さもあるが、重たく残りはしない上質の口どけの作品である。
たまたま手にとって、表題作「猫とともに去りぬ」の設定がユアグローの「鯉」(「ケータイ・ストーリーズ:収録)と同じ設定だな、どう違うのかな、と思って読んでみた。こちらはローマ廃墟の猫になってしまうおじいさんの話であるが、あちらは鯉。こんな風に考えることは結構ある、ということなのだろう。ここではなかなか楽しい展開になっている。
他には白雪姫を題材にした作品もある。シンデレラはSF仕立てになっている。イタリアらしく、ヴェネツィアの水没や、ピサの斜塔を扱った作品がある。いろいろあって楽しい。最後に納められている作品が運命や友情の無情観をひんやりとした後口として残すのも、一冊のまとめ方としてなかなか洒落ている。
ひとときの上質なくつろぎとしてはなかなかお買い得な一冊だと思う。