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猫の話は本書を構成する一部分にしか過ぎないが、だからといって期待はずれに終わらせないところに本書のパワーがある。家では数匹の猫を飼いならしている著者は、アフリカで実際にライオンにも接している、無類の猫族好き。そんな著者だからこそ猫族の立場から人間を見るという独特の視点に立つことに成功しているのだろう。
動物はわれわれ人間が考えているほど単純な生き物ではないということがわかった。あるいは動物の立場からしたら、人間ほど自分たちのことばを理解してくれない動物はいないと思われているのかもしれない。読後、なにとはなしに謙虚な気持ちにさせられてしまった…。
本書の原題は"The Tribe of Tiger"(=ネコ族)、飼猫だけでなく、虎、ライオン、ピューマなど広くネコという種族について、その種としての性格、習性、文化について、観察と考察を加えたものである。
第一部は著者自身が飼っている家猫のユーモラスな行動から、ネコの習性を考察。
第二部はアフリカにおけるライオンと人間の関係についての考察。
第三部は人間とネコ族の将来的な新しい関係についての考察。
となっている。
著者の本業は人類学で、アフリカでのフィールドワークが長い。そのためか野生動物と人間との関わりについての洞察が特に深い。
例えば、40年前、サン族はライオンを言葉で追い払うことができた、という。サン族とライオンの間にお互いに「敬意」のような関係が存在し、ある種のコミュニケーションが成立していた。が、アフリカの近代化によって、サン族とライオンの昔からの関係が消滅したため、ライオンが人に敬意をもたなくなり、他の動物同様に人を襲うようになった、という。良し悪しは別にして、種族としての人間と、種族としてのライオンの関係が、大きく変わってきていることは確かなようだ。
もっとも、このようなカタイ話ばかりではない。第一部は、ネコ好きのひとが読んでも十分楽しめる内容になっている。テレビの獲物に飛び掛るネコ、人間にえさのとり方を教えようするネコ、物陰からのぞく丸い頭が大好きなネコ。たしか、佐々木倫子の「動物のお医者さん」にも、同じような場面があったことを思い出した。
ネコ族の生態を中心に書かれた本ではあるが、人間との関係についても、とても奥が深い。ネコ好きの人にはもちろん、動物と人間、自然と人間のあるべき姿に興味がある方にもお勧めしたい。名著といってよいだろう。
著者のエリザベス・M・トーマスは、人間にもっとも近しい2大生き物『犬・猫』それぞれを題材にした本を書いている。本書は、『犬たちの隠された生活』の続編。
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