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いまや稀に見る猫好きを自覚する私は、書店でこのずばりなタイトルと粋な装丁にどきっとした。
目次に目を走らせれば、井伏鱒二、大佛次郎、谷崎潤一郎、柳田國男といった大物の名前が並んでおり・・各氏が自らの猫にまつわるエピソードを書いているというものであった。
掘り出し物を得た気持ちで早速購入し、家でのんびりとページを繰った。
11人の著者によって、1話か2話ずつ書かれているが、最後の柳田稿以外は、自分の飼い猫あるいは近所の猫などとの関わりを描写したものである。いずれも、それぞれの形で猫との間に愛情が育まれていく様子が目に浮かぶ。
柳田氏は野良猫の類について、その生態や人間に対する態度を考察するとともに、化け猫の話などの俗話を扱い、人間が猫に対して持ってきたイメージなどを分析している。
本書の中でとりわけ印象深かったのが、寺田寅彦氏の「猫」である。40歳を過ぎて初めて猫を飼うことになった著者は、しだいにその猫に懐かれ、好奇心旺盛で甘え上手な様子に魅了されていく。この猫というのが、これまた魅力的で、蝦蟇にちょっかいを出して毒素にやられたり、蚊帳に尋常ならざる関心を持ったり。読んでいて飽きのこない、楽しい物語だった。
クラフトエヴィング商會とは、吉田浩美、吉田篤弘による制作ユニット。本書は猫派の浩美氏によるプロデュースであり、犬派の篤弘氏による姉妹本『犬』がある。篤弘氏は著書に『つむじ風食堂の夜』などがある。