行商人・ロレンスと狼の化身・ホロの、確かめあうようなやりとりに、心地好さを感じ、あぁ、「狼と香辛料」だと安心する5巻目。
最初の頃の緊張感はなくなって、お互いの気持ちを確認するためにこづきあうみたいなところが、物足りなくもあるが、それは致し方ない。微笑ましいのろけを楽しむだけだ。
ロレンスのいうように、楽しいほど別れた時に思いが巡り、寂しさを感じるほど。
お互いの気持ちを知り合い、すれ違いや行き違いによる緊張感がなくなる一方で、あまったるいのろけが増えてくるが、それが嫌な感じではなく、好ましいものだと感じるのは、この二人が好きだからだろう。
今回もロレンスの商売話と二人の関係が二本柱で話が進む。
北の港町・レノスでホロの故郷の情報を探しながらも、ロレンスは商売の臭いをかぎつける。3巻に引き続き、教会の北への遠征が中止になったことをきっかけに、毛皮取引にごたごたが起こるのだ。
前半は割りとまったり進むが、後半のホロの戸惑いを巻き込んで一気にテンションをあげていく様はさすが。
幸せであり続ける物語に永遠はないというホロの不安は読者のそれと同じで、言い表せぬ一体感がそこにある。
商売話は今回も一筋縄ではいかない。もちろんそれは当然、そうなのだが、ホロとロレンスとの関係性に強くフォーカスが合わせてあった分、読んでる側も商売話から目がそれていて、なんというか、虚を突かれる感じなのだ。
この辺りはマンネリズムの心地好さとストーリー展開の驚きが両方あっておもしろい。「狼と香辛料」らしさを再認識といった感じだ。
あと、酒場の名もなき娘とのやりとりが小気味良かった。
ロレンスの余裕がこにくらしいぐらいだが、いい女がそばにいる男は魅力的でもてるというのは真実だ。
女商人・ボランももちろんかっこいいのだが、こっちは一癖あってもやもやするものが残るのだが、酒場の娘は無条件に好きになった。
物語はまだしばらく続きそう。
この幸せな物語がずっと続いてほしいと思うのはホロだけでなく、読者も同じだ。
その切なさを押し込めて、ホロと同じ気持ちで次巻を待ちたいと思う。