この巻で狼と香辛料の本編は完結となります。5年間ロレンスとホロの旅を追ってきた身としては感慨深いですね・・・。短編はまだ発売されるそうなので期待したいと思います。
思えばロレンスとホロの旅は、実は未だに1年にも満たないのですね。この巻で私たちが知ることが出来る二人の旅路は終わってしまうのでしょうが、新たに希望を抱かせるような終幕でした。むしろこの巻全て、いや、物語全てがそうだったのかもしれません。二人が生きた世界は十四世紀から十五世紀ぐらいのドイツ近辺がモデルだそうですが、古い価値観が新しい価値観に上書きされていく世界だったのですね。歴史や伝統という古くからの存在としてのホロがいて、商業という新たな存在としてロレンスがいる。古い存在と新しい存在というテーマが、本編を通じてどこまでも存在していたように思います。古い存在は上書きされていく。古い価値観と新たな価値観がぶつかり合い、人々に摩擦が生まれ、葛藤する。しかし消えゆく儚さは美しく、抵抗の末に見る希望もあるのです。
ロレンスとホロが過ごした時間はまだ僅かで、あまりにも濃い時間でした。麦畑で莫大な時間を過ごしたホロにとってのこの旅路は、ひどくかけがえのないものでした。そしてこれから彼らが共に過ごすであろう時間を考えると、期待と希望に満ちているように思うのです。今後彼らがどのような人生を歩むのか分かりませんし、新たな困難があるかもしれません。しかし、何故か私はある種の確信を持って、ページを閉じることが出来たのでした。そして、目に入った表紙のホロがこれまでと、これからの全てを象徴しているように思え、私は安堵しました。
両先生方、長い間お疲れ様でした!今後のご活躍を心よりお祈りしています。