「狼たちの午後」は、ディスク枚数が1枚の版も発売されていますが、個人的にはこの2枚組をお勧めします。日本語吹き替えが収録されているからです。この吹き替えは、尺の都合で時々英語音声に切り替わったり、主人公の名前が改変されたりしているものですが、作品の緊迫感を伝える優れた出来だと思われます。皆さんもこのDVDを購入されたら、視聴なさってみて下さい。
この映画は、実際に起こった銀行強盗事件をモデルに作られていますが、物語が格差社会や同性愛者差別、国家権力、マスメディアへの批判を絡めながら進行するため、一般には社会派映画として認知されています。私もそのような捉え方ができるとは思いますが、やはりこの映画は、テーマが社会性に富んでいるからというよりも、むしろ映画としての表現が優れているから名作として評価されるのだろうと感じます。
特に、主人公たちが強盗をする冒頭のシーンが大好きで、私は何度も観直してしまいます。主人公は銀行で働いた経験もあり、頭も悪くないのに、犯罪者としては素人なので、段取りがモタモタしたり、慌ててバタバタしたりします。その様子を、主人公の動きと顔の表情、そしてカメラの揺れが巧みに伝えていました。襲われた銀行員たちが怯えながらも冷静な素振りを見せるという演出にも、巧さを感じました。プロの強盗による鮮やかな手際よりも真に迫った感じがし、主人公の焦燥感がよく伝わってきました。
また、この映画では、主人公を演じるアル・パチーノが、目つきやちょっとした仕草で、役柄の性的嗜好が観客にパッと伝わる演技をしています。こちらにも注目です。
ラストシーンに鳴り響くジェット機のエンジン音が観終わったあとにも心にズシンと響く、素晴らしい映画だと思います。