独立請負人−Independent Contractor という働き方がある。ある組織に雇用契約ではなく、業務単位の契約を結んで仕事をするやりかたである。フリーターや派遣契約の首切りが問題化されているが、そもそも専門知識を持って高収入を得る働き方であった。
しかし、まさか独立請負人の外交官がいるとは予想もつかなかった。
外交官は外交機密に守られて、外交官の業務は謎のベールに包まれている。国益を守るために、外国の政府と日夜議論と説得をしていると信じている。しかしニュースに漏れてくるのは、外交機密費の流用、大使館員の優雅な生活などの話のような想像とはまったく違うものであった。
本書は、世界を統治して今なお国連安保理事国として強い立場をとる、イギリスの外交官の業務と日常生活、そして国連での国際議事を著者の視点で描いている。
外交官といっても日常の仕事はルーチンワークであり、自分の意見でなく政府の意見を外交の場で通すことにある。国対国の利益をどれだけ確保できるかを、本音と建前のポーカーゲームに費やされる。そこには、仕事に追われる余り国の利益を追求しても、国民一人一人の顔を浮かべながら少しでも国を良くしていこうと考える余裕もない。
そして著者は国連大使館員として、国連ではイラク問題、コソボ、ソマリアの問題ではどのように議事が進行したのかも教えてくれる。
国際間は、結局は国力どおしのぶつかり合いで民主主義はない。
安保常任理事国は厳然たる力を持ち、そうでない国は発言する機会すらない。
著者はそんな現実に絶望し、弱い国のための外交官として働くためのNPOを立ち上げ、イギリス国民でありながら、コソボ共和国のための外交官としてスタートした。プロ中のプロである独立外交官がどんな能力と責任があるかを考えれば、フリーターや派遣から独立請負人となる道も見えてくるかもしれない。