この本は、清水義範&西原理恵子による「世の中の色んなことを、面白おかしくかつ分かりやすく紹介しましょう」というシリーズの新作で、国内外の名作文学を紹介したブックガイドである。理科・社会・算数・国語・雑学ときて、今度は文学ガイドだ。
この二人の手口は昔から変わらない。まず、清水氏が題材を常識的見解の立場から分かりやすく説明し、読者に「難しそうなテーマだったけど、そんなに難しくないかも」と思わせる。その上で西原氏が題材を罵倒するかのような漫画を描き、、読者を「サイバラに罵倒されちゃうような事だったのね」と笑い飛ばさせてくれる。こうして読者は難しそうなテーマを笑い飛ばしながら理解できる。理解できないぐらい難しい話は、サイバラが「わかんねーよこんなもの」と書いてくれるので安心だ。面白くてタメになるのが清水&西原シリーズの特徴だ。
では今回の名作ブックガイドはどうだろう。清水氏はいつものように敬遠しがちの文学作品を分かりやすく説明してくれる。「ロビンソン・クルーソーは経済小説」「ハムレットはマザコンという言葉がない時代に、マザコンの心理を描いたのが凄い」「罪と罰は描写がねちっこいけど、テーマ性を意識せずに犯罪小説として読むと面白い」といったようにだ。ただ清水氏が「名作と言われているけど、そこまで面白くないよね」と思っていそうな作品の回は、その分かりやすさが半減している。「つまらない」と言い切らずに、面白さを探そうとするあたりが良識的だとは思うが、その分まどろっこしい。
だがサイバラは違う。つまらない作品はつまらないと書いてくれる。特に「谷崎を渡辺淳一みたいなもの」と斬り捨てたり、「ちんたら小説を現代人が読む必要はない」と言い切ってくれたりした点が嬉しい。サイバラの暴走はそのレベルで留まらない。本当にどうでもよい作品の回では、書評漫画であることを放棄し、関係ない話をするのだ。描かないことで作品のどうでもよさをアピールする。まさに「スルー書評」だ。『好き』の反対概念は『嫌い』ではなく『どうでもよい』と言われるが、まさにどうでもよい扱い。
このスルー書評という技は、一般的な書評の場では難しい。なぜなら題材として取り扱った時点でスルーできていないからだ。その点、清水氏が持ち込んだ文学作品を、サイバラが自分で選んだわけでもない作品を扱うからこそ、このスルー書評という芸ができたのだろう。