本格ミステリの名手、山口雅也氏の久々のノンシリーズで、帯に―ガリヴァー旅行記』幻の続編!?―とあったので手を伸ばす。
『ガリヴァー旅行記』といえば、小人の王国(リリパット)や巨人の王国(ブロブディンナム)で知られるが、原著が発表された18世紀のイギリスでは、痛烈な社会風刺文学として問題視され、著者無断の改変が何度も行われたという曰くつきの一冊なのだ。(沼正三の長篇SF・SM小説『家畜人ヤプー』は『ガリヴァー旅行記』の第4篇「フウイヌム国渡航記」に登場する野蛮な種族ヤフーにインスパイアされたとか。ちなみに検索エンジンのヤフーはこの名からとられた)
本書では扉のあとに著者名としてレミュエル・ガリヴァーの名が記され、プロローグには「ガリヴァー船長より従兄シンプソンへ宛てた第二の書簡」。続いて本書編纂者のダブリン大学主任教授、ジョアンナ・ウィストによる註と解説が配され、のっけから二重三重のトリッキーな偽書仕立となっている。
アナグラムからKANNONZAKI(観音崎)ではないかと推測される場所(註より)にガリヴァーが上陸したのは1709年のこと。ガリヴァーと発音が近い狩場(カリヴァ)という側用人の案内で、時の将軍綱吉にガリヴァーは謁見し、二人は密命を帯びた南洋への航海へとでかけることになる。
船上で起こる裏切りと海賊との戦い。いずれにも徳川幕府内部とヨーロッパの植民地争いが絡んでいて事態は二転三転。後半には「ジュラシックパーク」ばりの恐竜との戦いもあり、「未知との遭遇」ありのエンタメ要素満載で存分に楽しめました。できることならモンティ・パイソン関係者による実写化希望! もし実現するなら、バグパイプで恐竜と戦う侍を今はなき、ジョン・ベル―シに演じて欲しいなどと妄想が膨らみました。
ちなみにスウィフト著の本家『ガリヴァー旅行記』にも、ちゃんと日本上陸の記述はあるようです。